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ぷちぷちサミット(12) ワクチン分断社会の現出


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非接種者たちが作る落人(おちうど)集落

吾狼: お久しぶりです。今日は2022年10月9日ですね。明日は体育の……いや、スポーツの日で休日らしいので、三連休の中日(なかび)ですか。
 お二人ともお変わりなかったですか?

幽大: 余輩自身のことなら、寿命が少し減ったということくらいかな。

吾狼: 寿命って、伸びたりはしないんですか?

幽大: いいことがあれば伸びるかもしれんがな。いいことなんぞ、一つもないからな。
 ただ、余輩が暮らしている土地では多少変化が起きておるよ。
 都会から逃げてきた連中が耕作放棄地や未開の土地を買って、共同農場みたいなものを作り、その周囲の空き家などに住み着き始めておる。

イシ: 逃げてきた? なんだか平家の落人集落みたいですね。

幽大: まさにそんな感じかもしれんな。まだ数家族、総勢十数人くらいじゃが、余輩のところにもたまに来て雑談したり、酒呑んで歌ったり踊ったり……。

イシ: どういう人たちなんですか? 自然農を志向するナチュラリストみたいな?

幽大: いや、そういうはっきりとした主張を持っているわけではなさそうだな。共通しているのは、ワクチンを打っていない者たち、ということかな。医療現場や介護施設にいた者もまじっとる。

吾狼: ワクチン非接種者集落ですか。

幽大: そういう定義もどうかと思うが、結果的にはそうかもしれんな。
 職場での接種圧力が強くて、抗いきれず、たまらず仕事も家も捨てて遠方へ移住したというようなことかな。
 その数家族は親類縁者というわけではなく、ネットを通じて知り合ったそうだ。若い独身者もいたな。

イシ: ワクチンを打ちたくない、というだけでグループができて、新しい集落ができる……みたいなことですか?

幽大: ワクチンだけではないんだろうがな。これから間違いなくやってくる食料危機、エネルギー危機を乗り切るためには、都会から早めに出て、自給自足的な生活を始めたほうがいいだろうとか、そういう価値観や考え方が一致した者たちが、少数でも結びつきを求めて……ということではないかな。

吾狼: ああ~、分かります、分かります! いわゆる「分断」社会で起きている現象ですね。
 ぼくが知っているのはネット上のワクチン非接種者コミュニティです。非公開のものがほとんどですが、いくつかできているのを知ってます。
 ワクチンを接種していない者だけが集まる小規模閉鎖系SNSみたいな感じですね。

イシ: へえ~、それは興味深いね。そこで思いっきり憂さ晴らし雑談をかわすわけ?

吾狼: いえ、今はもう、そういう段階を超えてますね。もっと現実的というか合理的というか切実というか。
 例えばマッチングアプリ的な利用を考えている若い人たちのグループ。彼らは接種者との恋愛を避けようとしているんです。自分が好きになった相手がすでに2回も3回も打ってしまっているとなると、これから先、どんな運命が待っているか分からない。結婚しても子供がちゃんとできるのか。それ以前に、シェディングが怖くて、身体に触れる……まさに「濃厚接触」するのが躊躇われる。
 ワクチンを打ってしまう人たちは、ウクライナ関連でも簡単に瞞されてますから、そういうことでいちいち言い争いになるのも疲れる。
 だから、最初からワクチンのことを考えなくてもいい相手だけが集まっているグループで相手を捜したい……という。

イシ: なるほど。まさしく合理的というか、現実主義だね。しかし、なんという社会になってしまったのかねえ。

幽大: 余輩の近所にできつつある落人集落もそんな感じだな。多感な時期の子供を学校に行かせたくない。学校に行くと、一日中マスクをさせられ、給食の時間も机を離して黙食なる行為を強制させられる。そんな異常な環境にわが子を放り込むわけにはいかない、というわけだな。
 そこで、極力、マスク社会から離れた場所に移住して、子供の教育は自分でやる。足りない部分は同じ意識を持った隣人らが助け合う。そういう小さな社会の形成を試みておるようじゃ。

イシ: かつてのヒッピーコミューンみたいな感じでしょうか。

幽大: いや、だいぶ違うのではないかな。かつてのヒッピーは、文明を否定して自然に還れ、といった主張を持っていたと思うが、余輩の周囲の落人たちは、理想論を持っているわけではない。電気もガスもクルマも、使えるうちは普通に使う。食料備蓄のために大きな冷蔵庫を2つも3つも揃えた家族もおる。
 しかし同時に、電気やガスや石油が使えなくなることを想定して、薪ストーブやロケットストーブを備え、薪割りの技術を磨き、井戸を掘ったり沢水を引いたりといった、生きるための基本的な知恵と技術を身につけようとしておる。それが理想の暮らしだというのではなく、なくなったときにしっかり生きていけるように、ということだな。
 不慣れなことを始めておるから、いろいろとぎこちないがな。例えば、いきなり稲作はできんから、いちばん簡単なジャガイモあたりから始めておるようじゃし。ちょっと頼りないというか、微笑ましいというか……。

吾狼: ああ~、なるほど。ぼくも参加しようかな。理にかなっていますもんね。
 ぼくが知っているネット上の非接種者SNSも、みんなどこか醒めているんですよ。
 表のSNSでは今もワクチン論争やウクライナ論争がバチバチ続いてますけれど、そういうのに疲れたというか、もう諦めてしまった人たちが静かに集まって、自分にとって楽しいことだけを呟き、新たな友人ネットワークを小規模に作っているような感じですね。

イシ: 諦めてしまった、というのはよく分かるね。私自身がそうだし。
 最初の頃は、きちんと説明をすれば簡単に分かってもらえると思っていたんだけれど、まったくそうじゃなかった。打つ人たちというのは、とにかく聞く耳を持たないのよね。そんな話は聞きたくない、知りたくないという強烈な拒否反応。あれはどういうことなんだろうね。拒否反応を超えて、もう滅茶苦茶な反論とかもしてくる。そういう経験が続くと、自分を守るためにも、そのことには触れないようになってしまうよね。社会が乱れると少数派が攻撃されるようになっていくというのは、いつの時代でもそうだから。大袈裟ではなく、最終的には隣人たちの手で抹殺されるかもしれないという恐怖を抱くよ。

幽大: まさに戦前戦中の社会がそうだったわな。
 赤紙を拒否したら、特高や軍に捕まる前に、町内の住人たちが黙っとらんわな。そうなるのが分かっていて、しかし兵隊に取られるのだけは絶対に嫌だとしたら、ひっそり遠くに逃げて身を隠すしかない。
 余輩の周りにできつつある落人集落も、結局はそういう危険を感じた者たちの隠れ里なんじゃろう。

吾狼: うわ~、たまらないなあ。まさにもう戦時中なんですね。うう~。


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