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ぷちぷちサミット(16) 個々の意識が現世を具現化する


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重なり合う世界の集合体としての現世

吾狼: でも、そうすると、ぼくが住んでいる世界と、幽大さんやイシコフさんが住んでいる世界は同じものではないということなんですか? ぼくが見ているお二人は実体ではなくて幻想というか、ただの映像のようなものなんですかね。

幽大: いや、そういうことではないな。余輩が見ている世界と吾狼くんが見ている世界はほとんどが重なり合っている。しかし、同じ世界ではない。重なり合っている部分は共通だから、わしらの目の前に赤い郵便ポストがあれば、そのポストは同じポストだ。同じ形、同じ質量、同じ色をしている。まあ、色に関しては「赤い」という色の認識の仕方が違っておるかもしれんがな。
 ここで、余輩が死んで肉体が機能を停止したとする。余輩の脳が活動をやめてしまえば、余輩と紐づけされた世界は消滅する。多重構造であった現世から薄い1枚の世界が抜け落ちるわけだ。しかし、残った世界は相変わらず今まで通りの形をしている。吾狼くんの目の前にあったポストはそれまでと同じような形、質量、色を持った物体として存在し続けている。しかし、その世界は余輩の脳が認識していた世界が重なっていたときの多重構造とは違う世界になっておる。
 分かるかな?

吾狼: ええ、まあ……なんとなく……。

イシ: 今の話に量子論的な説明を加えてみましょう。
 世界は目に見えない極小の物質……量子の集合体であり、量子は絶えず動いているし、それを観測する意識の有無によって動きを変えている。変化しているわけですよ。
 有名な「二重スリットの実験」で暗示されているように、量子はそれが観測されているかいないかによって動きを変えるという、人間の理解を超えたものです。

幽大: 二重スリットの実験? 聞いたことはあるが、どういうものだったかは忘れてしまったな。

イシ: 平行する2本のスリットに光をあてると、光は「波」の性質を持って進むので、その向こう側の壁には「干渉縞」と呼ばれる濃淡のある縞模様ができる。
 ところが、同じ二重スリットに電子ビームで電子を1つずつ打ち出したときも縞模様になる。電子が1つずつだから干渉し合うわけがないのになぜ干渉縞ができてしまうのか?
 そこで、1発ずつ打ち出した電子が、スリットのどっち側を抜けていったのかを記録してみると、今度はきれいに2本線が現れた……。そういう理解不能な観測結果が出てしまった実験ですね。
 簡単にいうと、人間が観測していると電子は粒子のような挙動をする。観測しないと波のように振る舞う、ということですね。つまり、人が見ているか見ていないかで、挙動を変える

幽大: ああ、思い出した。歳のせいで、最近は歴史的な事件やいろいろなデータは覚えておるんだが、そういう実験とか理論とかは記憶が薄れてしまってな。

イシ: データを覚えているというだけでも凄いですよ。私はそういう記憶がすでにボロボロです。
 で、話を続けますが……この「観測されている」というのは「認識されている」ということですから、幽大さんと吾狼さんの二人に認識されている状態と、幽大さんが消えて吾狼さんだけが認識している状態では、目の前にある郵便ポストを構成している量子の動きも違うかもしれないですよね。

吾狼: わぁ~、ここで量子論が出てくるわけですか!
 でも、そう言われると、なんとなくそういうことか~、って分かったような気になるような、ならないような……。

イシ: 量子は絶えず動いている、ってのは分かっているわけだよね。あらゆる物質は原子でできていて、原子は原子核の周りを電子が回っている、と説明されてます。物理学の世界でも、そのことに異を唱える人はほとんどいない。石のような動いていない物体でも、それを構成している量子レベルで見れば常に動いている。しかも、量子と量子の間はスカスカなわけですよね。
 原子核をごま粒の大きさだとすると、電子はごま粒より小さくて、原子核というごま粒から100㍍くらい離れているところを動き回っているわけです。その間はなんにもない。
 私たちが固くて隙間など何もないと認識している石も、原子の集合体だから、本当の姿はスッカスカなはずなんですよ。そういうものを人は石として認識し、触ったり持ち上げたりしている。そういうのが私たちが認識できる物理世界なわけです。
 スッカスカの世界が重なり合っているのが「現世」で、しかもそれを構成している極小の物質──量子は認識のされ方によって動きを変える
 人間の脳では理解しきれないことですけれど、そういうわけの分からないものが「現世」……私という脳が認識している、私に紐づけされている物理世界なのだとしたら、その物理世界で起きていることなんて、3D映画の一コマにすぎないのかな……と。

幽大: ほ~お、なるほど、イシコフさんが説明すると学術的な香りが加わって説得力が増すな。
 余輩は物理学的な話はできんが、感覚的な話はできる。妄想とも言うがな。
 わしらが住んでいるこの物質世界なるものが、個々の意識と紐づけされた無数の世界の重なり合わせだとすれば、物質そのものも、最初は「意識」から生まれたのではないかな。
 肉体と魂は別のものだと考える者も、肉体に魂が宿ると考えるじゃろ。肉体が先にあって、そこにどこかから魂がやってきて入り込むといった感じだな。しかし、もしかすると逆ではないのかな。

吾狼: 逆? 魂に肉体が入り込むんですか?

幽大: いや、違う。入り込むのではない。魂が先にあって、魂の活動によって物質が作られる、という感じかな。

イシ: それは面白いイメージモデルですね。すごく面白い。
 ということは、あらゆる物質は、無数に存在した意識が集まって、その結果形成されたということになりますか。生物も無生物も。

吾狼: 例えば、タコという生き物は、そういう生き物がいたら面白いなと思った「意識」がたくさん集まった結果生まれたんですか? タコは地球上に人間が現れる前からいたようですから、タコを作った意識は人間の意識ではないですよね。

幽大: う~ん、そう言われると、なんとも答えようがないが……。魂は人間だけにあるものではないからな。

イシ: この話、もう少し掘り下げてみたいですね。掘り下げるというか、広げるというか……。




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