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ぷちぷちサミット(18) 人間社会も集団意識で変わるのか?


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人間社会は集団意識で変わるのか?

吾狼: 「人間社会も、その社会を構成している人たちの意識によって変化する」というのは、そんなにすんなりと受け入れられる話でしょうか? ぼくはそう簡単ではないと思っているんですよね。特に最近の世界情勢や日本の社会を見ていると。

幽大: おや、今度はイシコフさんより吾狼くんのほうが悲観論かね。

吾狼: 現世は個々の意識に紐づけされている別々の世界が複雑に重なり合っている多重構造だという最初の話に戻りますが、そうだとすると、だからこそ簡単には変えられないと思うんですよ。というのは、社会を本気で変化させたいという強い意志を持った人というのは、ものすごく少数だからです。ほとんどの人は、こうなればいいなという淡い希望や期待は持っていても、そうなると信じていないし、そういう方向に変えていくんだ! という強靱な意志は持っていないですよ。

幽大: なるほどな。だからこそ、悪知恵の働く少数の者によって簡単に支配され、洗脳され、利用される。まあ、人類史を見ればそれはその通りだろうな。

吾狼: いわゆるサイレントマジョリティというか、付和雷同型の人間が大多数を占めている以上、多重構造のほとんどの部分は変わらないでしょ。

イシ: 変わらない、というか、簡単に変わってしまうからこそ全体では変わらないということかもしれないね。言葉遊びのようになってしまうかもしれないけれど。
 少数の支配者の意思で大多数の人間を動かせるという社会構造は昔から変わっていない。その結果、大多数の意識は簡単に変えることができるしコントロールできる。メディアツールが発達した現代では、民主主義などというものは、支配者にとっては都合のいいシステムともいえるね。

吾狼: あと、個人の「こうなればいいな」という願望は、お金がもっと必要だとか、子供を有名大学に入れたいとか、異性にもてたいとか、そういうエゴイズムというか個人レベルの願望が主で、ついでに世界全体が平和であればいいですね、という程度のものなんですよ。
 それは支配者層も被支配者層も大して変わらない。同じ穴のむじなというか、支配する側の欲望を支配される側も持っているからこそ従ってしまう。おこぼれにあずかれたらいいという心理が大きく働く。
 結果、個人レベルの願望を満たしていくと、結果として世界全体は破滅の方向に向かうんですよ。浪費や武力や金力による競争、他人の支配を生みますから。

幽大: 人間とはそういうものだ……と。だから、現世が破滅の方向に向かうのも人類が滅びるのも自然の成り行きだというわけかな。なんともつまらん結論じゃな。

個人の世界観は「世界」の一部

イシ: では、こういうのはどうでしょう。
 私は子どもの頃、世界は自分の周囲の目に見えている範囲にしか存在していないんじゃないかという妄想にとらわれていたことがあるんです。知識が乏しい子供にとっては、目に見えるもの、手で触れられるものが世界のすべてですから。
 ペンギンなんていないんじゃないか。北海道なんてないんじゃないか。アメリカなんてないんじゃないか。地球なんてないんじゃないか。そう思わされているだけなんじゃないか……と。

幽大: おうおう、余輩もその感覚は覚えがある。なんなら今もどこかでそう思っているかもしれん。

吾狼: ぼくもありました。そういう子供時代の記憶というか感覚。

イシ: その「実在している世界は自分の周囲だけ」というイメージを、今してきた「現世は多重構造の世界」だという話に絡めてみると、ある意味、成立するのかもしれないと、今、ふと思ったんですよ。
 私が今認識している世界は、視覚聴覚触覚などの五感が感知している範囲だけでなく、知識や体験として知っている世界も含むとしましょう。
 ペンギンも北海道もアメリカもありました。実際にこの目で見ることも行くこともできました。体験や知識を通して、私の世界は確実に子どもの頃に妄想した世界よりは広がっていきました。
 それでも、一瞬一瞬で把握できる世界は相変わらず限られているわけです。この地球上の世界に限っても、私が行ったことのない国はたくさんあるし、知らないもののほうが知っているものよりはるかに多い。この世界のすべてを把握できるはずもない。
 吾狼さんや幽大さんが知っている世界には存在しているけれど、私が知っている世界には存在していないものがたくさんある。3人が知っている世界を重ね合わせると、世界は少し広がる。さらに別の人の世界が重なると……と、そういう風に何層にも重なり合った世界が現世であるなら、私は自分の知らない世界のことにまで責任は持てないというか、コミットできないのはあたりまえですよね。
 現世の中の薄い1枚である「私の世界」というパーツの中でのみ生きていることを全肯定するしかないわけです。
 で、そのちっぽけで薄っぺらい「私の世界」は常に変化している。私が何かを体験したり、思考したり、行動したりするたびに変化する。あるときには大きく変わるかもしれない。
 私の場合は、エントロピー環境論を知ったときなどは、世界が大きく変わりました。「世界観」といったほうが分かりやすいですかね。
 世界観はあくまでも個人の脳の中の思考モデルであって、実際の世界ではないと言われそうですが、今日の話のような視点で考えれば、世界は個人の意識と紐づけされているんですから、個人の世界観イコール世界の一部なんですよね。

吾狼: 一人一人が自分の世界観を大きく変えれば、世界全体も変わるということですか?

幽大: 世界全体ではなく、「現世」だな。「現世」は世界全体、本当の世界のごく一部にすぎんのだから。

イシ: そうですね。きれいごとになってしまうかもしれませんが、そう考えればいいんじゃないですかね。
 その変化の仕方がどんどんまずい方向に向かって最終的に人間社会が破滅したり、人類という生物種が消滅したとしても、それは「現世」に起きたことにすぎない。本当の世界は現世を出現させた総合体というか、我々が認識できない次元のものなのだ、と。

吾狼: 逃避行動と言われるかもしれませんが、そういう一種の達観というか、割り切りって大事ですよね。ぼくたちは所詮、自分の世界にしか生きていないんだから。
 自分の力では世界を変えられないからしょうがない、どうでもいいということではなくて、自分が肉体と一体化している以上、自分の脳が認識している世界を精一杯生き抜けばいい。それが成功だとか失敗だとかいう評価も、現世を包み込んでいる世界全体からみれば、3D映画館で上映されている映画のストーリーにすぎない。悲劇もあれば喜劇も不条理劇もある。

イシ: そうだね。そういう気持ちを持っていれば、免疫力もそれほど落とさずに済むかもしれないね。

「神」は分母がゼロの世界にいる

幽大: 余輩は肉体が消えた後、その「元の世界」に戻って行くというか、再び吸収される……その準備ということを、今は強く意識しておるんだ。

吾狼: またぁ! 幽大さんはすぐに死ぬ死ぬって言うんだから~。そんなに急がなくてもいいじゃないですか。ぷちぷちサミットの貴重なメンバーがひとりいなくなるのは寂しいですよ。もう少し一緒にこの映画を見ていましょうよ。

幽大: べつに死に急いでおるわけではない。余輩としても、この冬を越した来年の現世がどうなっておるのか見届けてみたいんでな。

イシ: こんなことを言うと怒られそうですが、私は幽大さんがどう変わっていくのかを見てみたいです。徐々に肉体から離れていく感覚とおっしゃいますが、その過程で、私や吾狼さんには見えないものが見えてくるんじゃないかと期待してしまうんです。本当の世界、世界の全体、言い換えれば「神」の世界が少しずつ見えてくるんじゃないかと。それが幻影のようなものであっても、教えてほしいんですよ。

幽大: それは期待せんほうがいいな。死に際にうわごとのようなことを呟くかもしれんがな。何かが見えたとしても、それを現世の言葉でうまく言い表せるとは到底思えん。

吾狼: はぁ~。今回はなんだかものすごい話になりましたね。でも、刺激的で楽しかったです。
 今ふと思いついたんですが、その「元の世界」とか「本当の世界」というものは、分母がゼロの世界なんじゃないですかね。

幽大: 分母がゼロの世界?

吾狼: ええ。数学では、ゼロはどんな数に掛けてもいいけれど、ゼロで割ることはできないと教えられますよね。ゼロで割ると数式が成立しなくなる。強いていえば(むげんだい)になってしまう。だから「ゼロでは割れない」「ゼロで割ってはいけない」とされているわけです。
 世界全体……神の領域というのは、そういう感じなのかなと、ふと思ったわけです。人間には計算できない、認識できないもの、でも、存在はしているんじゃないかと感じられるもの。

イシ: うまいね。座布団10枚かな。

幽大: では、吾狼くんに座布団10枚あげたところで、今回はこのへんにしておくかね。余輩はもう睡い。

吾狼: はい。座布団10枚ありがとうございます。では、みなさん、おやすみなさ~い。


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